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スピーカーを折り返す?!スピーカー中央の筒のハナシ

私たちの身の回りにあるラッパ型のスピーカー。
みなさんはその形について考えたことはありますか?真ん中に円筒形の筒が入っているものもありますが、その部分にはどんな役割があるのでしょうか。
今回は、普段何気なく見かけるスピーカーの構造についてのお話です。


ラッパ型スピーカーの種類と「ホーン」の役割

私たちがよく目にするのは、イベント会場などで人々の誘導に使われるメガホンや、街中に設置された防災行政無線のスピーカー。これらの形状には、大きく分けると2つの種類があります。
一つは、「ストレートホーンスピーカー」と呼ばれる円錐形に似た形をしていて、音が出る先端から後方まで真っ直ぐに長く伸びたもの。
もう一つは、「レフレックスホーンスピーカー」と呼ばれる前者よりも短くコンパクトで、中心に筒があるもの。
どちらの名前にもある「ホーン」とは、円錐形の筒のこと。音の入口が狭く、音の出口は広くなっていますよね。これは音を効果的に集約して、狙った方向に音を伝えるためのものなんです。通常、発せられた音は360°に散乱してしまいますが、このホーンの壁で拡散範囲を狭めて、音の向かう方向をコントロールしています。


こだわり抜かれた「ホーン」の設計

前者のストレートホーンスピーカーの原理は、スポーツ観戦などで用いられるプラスチック製の簡易メガホンとほぼ同じ。ただし、ストレートホーンスピーカーをはじめ、「ホーンスピーカー」と名の付くものは、さらに細かな計算が施されています。ラッパのようなあの姿には、音を効率的に放射させるための仕組みが詰まっているのです。
ホーンスピーカーで音が放射される際、音はホーン内部の壁に沿って前方に進んでいきます。この時のホーンの口径や長さによって性能は異なり、一般に口径が大きくホーンが長いほど、低音まで再生できます。しかし、あまりに大きいものは、実用的ではありません。そこでホーンの設計には、音を効率よく伝え、かつ聞き取りやすくするための音響理論が用いられています。ホーンスピーカーのほとんどはこの理論に基づく演算のもと設計されているのです。
また、このホーンの開口部の先端にはわずかなR(湾曲)がつけられています。これはホーン内で一定の進み方をしてきた音が開口部から急に制限なく空気中へ放たれた際に、その空気との境目で起こる反射や回折を防ぐためのもの。シンプルな筒でありながらも、そこには、音を効率的にまた雑音なく遠くまで届けるための細部までこだわった設計が凝らされている。それが、ホーンスピーカーなのです。

スピーカー中央の筒の正体は?

これまでご紹介してきたレフレックス型、ストレート型という2種類。いずれも「ホーンスピーカー」なのですが、一見すると全く違う形をしています。ですが、レフレックスホーンの断面を見てみると一目瞭然。レフレックスホーンは、ストレートホーンの長い筒を折りたたんだものなのです。

つまり、開口部に見えるあの筒は、折り返されたホーンの一部だったのです。

レフレックスホーンスピーカーでは、発生した音が折り返した筒の中を通って開口部の外へと伝わっていくので、ストレートホーンの時とほぼ同じ長さを音が通っていくことになります。
そして大きなメリットとなるのが、ストレートホーンスピーカーよりもコンパクトで、設置しやすいところ。筒の中で音が折り返し部分に当たって反射・反響するため、僅かに音質に影響を与えますが、最小限に抑えられるよう緻密な設計がなされています。

レフレックスホーンの進化とホーンスピーカーの理想形

1947年にTOAが初めて開発したレフレックス型ホーンスピーカー

レフレックスホーンは、1940年代に海外で開発されたものです。
このレフレックスホーンを日本で初めて作り上げたのがTOA。
初期の開発時点から効率の良い拡声が可能でしたが、さらなるコンパクト化を図るためにホーンの折り返し回数を増やしたり、軽量化・デザイン性を重視したさまざまな材質のホーンを開発したりと、進化が続いています。

一方で、見かける機会の少なくなったストレートホーンスピーカーですが、今でも一部自治体の防災放送設備などでは根強い支持を得ています。また、その完成された構造は現在のレフレックススピーカーにもしっかりと受け継がれており、TOA ではレフレックススピーカーを設計する際も、ストレート型の設計図を作成してから折り返しの方法を検討しています。
どれほど技術が進歩してもラッパ型のスピーカーの理想形はやはりストレートホーンスピーカーなのです。

皆さんも、スピーカーの形に注目してみては?

進化を続けるレスレックスホーンスピーカーと、原点であり一つの極まった形を取るストレートホーンスピーカー。現在でも、私たちの身の回りで両方の姿を見ることができます。屋外で響いてくる防災行政無線の音声が聴こえたら、ちょっと上を見上げてスピーカーの形を確認してみてください。
音の伝わる仕組みや形に込められた意味を知ると、聞こえてくる音が今までよりも興味深いものに思えてくるかもしれません。

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