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音響機器からスタートしたメーカーがカメラもつくっている!その歴史と理由とは…?

今年で創業90年を迎え、駅や空港商業施設や学校など皆さんに身近な公共空間の音響機器を手掛けるTOAですが、カメラなどの映像機器事業も40周年を迎えました!設計から開発、販売まですべて一貫して行っています。
放送設備と同じく、普段あまり意識されていないかもしれませんが、駅構内や商業施設の駐車場、大きな公園内でも、TOAの防犯カメラが皆さんをそっと見守っているのです。
でも一見、音響機器とカメラって関係ないようにも思えませんか?もともと音響機器の開発をしていたTOAが、なぜカメラを開発することになったのでしょう?今回は、そんな音響機器メーカーがつくるカメラのナゼを紐解いてみます。

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はじまりは「教育現場をより良くしたい」という思い

TOAがカメラの開発に乗り出したキッカケ、それは教育現場のお客さまからの声でした。1981年当時、教育現場では校内行事や授業に映像配信も取り入れようと、視聴覚室などの整備が進みました。もともと学校内の放送設備を手掛けていたTOAに、「放送室から音声だけでなく映像も流せないか?」とご要望いただいたのが、開発のはじまりでした。
それに応えて開発したのが、校内放送に加えてカメラからの映像を流すことができるAV調整卓。担当した開発者たちは「もっと映像技術を極めてみたい!」とモノづくりの探求心を刺激され、そこから、工場や銀行、商業施設など既に放送設備を採用いただいていた施設向けに監視用のカメラの開発がスタートしたのです。
とはいえ、社内には本格的にカメラを開発するための技術も乏しい状態…特に光学技術はまったくの手探りで、当時の担当者たちはレンズメーカーに直接教えを請い、光学の基礎を一から学んでいったそうです。

そして2年後の1983年、ついにTOA初となるCCTV(※)カメラの開発に成功!カメラ本体のほかに、モニターや映像を切り替えるスイッチャーなどの周辺機器もラインアップし、監視カメラシステムとして発売しました。

(※)CCTV=Closed Circuit Television 閉回路テレビジョンの略称で、テレビ放送の技術を応用して工業用に使われるテレビシステムのこと。ITV(Industrial Television 工業用テレビジョン)ともいう。


カメラ×音響機器ができること

こうしてお客さまからのご要望で始まったTOAのカメラ開発の歩み。時代の変化を反映しながら、その性能は瞬く間に進化していきます。そして、日々進化していくお客さまのニーズにもっとお応えしていこう!とする中、もともと得意としていた音響機器の技術に、カメラの技術を掛け合わせることで“カメラで見て、音響機器でしらせる”独自のシステムが誕生していきます。一見まったく異なる分野に思えるカメラと音響機器ですが、お客さまのお困りごとを解決するために何ができるのか?を考え抜いて行きついた、TOA独自のソリューションだったのです。
これまでのカメラ開発やソリューションの歩みをたどってみると、世の中の移り変わりも垣間見えてきました。

1)街の安全・安心を見守る

コンビニエンスストアが普及していった1980年代、24時間営業が浸透していくとともに店舗内の防犯目的でカメラの設置も普及していきました。TOAが初めてカメラを発売したのもちょうどこの頃。発売から数年のうちに、小型化・軽量化、カラー化と、お客さまの声に合わせて次々と性能も進化していきました。
1990年代に入ると、世の中の防犯意識は一層高まり、店舗だけでなくマンション等の集合住宅にも普及していくように。さらに2000年代に入り凶悪な事件も相次いだことから、建物の周辺だけでなく街中にも防犯カメラを設置する動きが盛んになっていきます。夜間や暗い場所でも使える防犯カメラの需要が高まっていったことを機に、TOAは日本で初めて、照度ゼロの環境下でも撮影が可能な赤外LED付カメラを商品化。街頭防犯用のカメラはますます普及していきました。
また、LAN接続できるネットワークカメラを開発したのもこの頃。インターネットの普及とともに、防犯カメラの映像を録画するだけではなく、離れた場所から映像を確認する使い方も広がり始め、技術的にも大きな変革期となりました。

2004年 東京都銀座に導入された「スーパー防犯灯システム」 所轄警察署とネットワークで結ばれており、有事の際に防犯灯に取り付けられた緊急ボタンを押すと、警察署と映像・音声が繋がりテレビ通話ができる仕組み。銀座の街中を映像と音声で見守るシステムとして活躍していました。

2)自然災害から守る

これまでの実績から信頼を得てきた防犯カメラは、次第に自然災害から街を守る、減災・防災の用途としても活用されるようになります。地球温暖化の影響で相次ぐ異常気象により、河川が氾濫するケースが日本各地で多発。夜間の水位の上昇も遠隔から24時間監視できる河川監視用のカメラは、各地の自治体で活躍するようになりました。

「河川監視カメラ」夜間でもハッキリと映像を確認できることに加え、太陽光などの自然エネルギーによる駆動も可能。携帯電話で用いられる通信電波を使って画像を伝送できるため、電気や通信インフラの整わない条件下でもご利用いただいています。

3)感染症から守る

そして2020年、世界的なパンデミックとなったコロナ禍でも、カメラ×音響機器のソリューションは更なる進化を遂げます。密閉、密集、密接のいわゆる三密を回避するために開発されたのが、ネットワークカメラシステムTRIFORAを活用した「混雑状況配信システム」です。

AI技術が搭載されたネットワークカメラで、撮影した画像から人を認識し、通過者や滞在者の人数をカウント。利用者さまに向けて、密回避を音声でおしらせするこのソリューションは、道の駅などでも活用されました。
このような画像センシングの技術は、密回避だけでなく、歓楽街での呼び込みといった条例で禁止されている行為の検知と呼びかけにも役立っています。

技術の進化と、これから

時代とともに進化してきたカメラの用途と技術。ディープラーニングによるAI技術の発達とともに、今後はより一層高度に進化していくことでしょう。発売から40周年を迎え、TOA社内では新たな商品の開発プロジェクトもスタートしています。
一見まったく別の分野とも思える、カメラと音響機器。この2つの異なる技術を掛け合わせることで生まれたTOA独自のソリューションは、皆さんの身近な公共空間にそっと寄り添いながら、今日も進化を続けています。世界が大きく変わろうとしている今、これから生まれるソリューションの進化にTOA社員自身もワクワクしながら開発を進めています。
街中で、駅や空港で、商業施設で、時折り見上げてみてください。きっとそこには、ひっそりと皆さんの日常を見守りながらより豊かに変えていこうと頑張る、TOAのカメラたちが居るはずです。

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