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コミュニケーションをボーダーレスに smoowa

COVID-19の世界的な蔓延。
感染防止を心がける日常が世界中で始まりましたが、それにより私たちの暮らしは以前と比べてすこし不自由なものとなってしまいました。
中でも特徴的なものが、マスクの着用やパーティション越しの会話が必要になったこと。

みなさんも、スーパーやコンビニエンスストアのレジや病院・役所の窓口などで、パーティションやビニールシート越しに店員さんと話をする時、「うまく話が通じない」「聞こえにくい…」と思ったことはありませんか?
スムーズな会話ができないことは、コミュニケーションや作業の手間を増やしますし、話が通じないことによるストレスも意外と大きいものになります。

そんな状況を目の当たりにしたTOA従業員が、“音で社会に貢献したい”という想いでつくり出したのが、「パーティション取付型会話補助システム」です。
さらにこの商品は、発売からわずか一年後の2022年にはより聴き取りやすく、使いやすく進化した新モデル「smoowa(スムーワ)」としてリリースされました。
この商品の開発と、短期間での機能改善には、どのような物語があったのでしょうか。
企画・デザイン・開発・営業に携わったメンバーにその開発秘話を伺いました。

パーティション取付型会話補助システムとは
マスクやパーティション越しの会話を聴き取りやすくサポートする音響システム。マイクとスピーカーを搭載したユニットが話者の声を検知し、適切な範囲に、適切なボリュームで聴き取りやすく補声します。マグネットによる簡単な取り付け、シンプルでわかりやすい操作性などが高く評価され、2021年度グッドデザイン賞を受賞しています。
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世界を見据え、 “音の困りごと”改善プロジェクトが再稼働

阿部:パーティション越しの会話が必要となった当初から、“声の聴き取りづらさ”をなんとか解決できないか…と考えていました。そう考えていたのは私だけではなかったはずです。そんな中、コロナ禍の緊急プロジェクトとして新たな商品開発が始まったんです。しかも、通常は企画から発売まで1年はかかるところを、ゼロベースで4ヶ月という超短期間での開発…誰もが未経験の領域でした。コンセプトはすぐに決まったものの、商品の発売までには量産や物流という、ショートカットできない過程がありますから、実際の開発期間はさらに短いわけです。とりわけ、実際の使用現場でのフィールドテストの時間が取りづらかったのですが、酒井さんが頑張ってくれました。

酒井:当初のパーティション取付型会話補助システムの開発段階では、週に1度はチームで集まってディスカッションを重ねていました。チームで試作機を作っては、お客さまのもとで使っていただき、ご意見をもとにすぐさま改善する。この工程を短いサイクルで何度も繰り返してブラッシュアップしていったんです。製品が完成した時は、お客さまの声が形になったようで本当に嬉しかったですね。

阿部:コロナウィルスの影響が拡大していく中での急ピッチの開発、限られた時間の中で、できる限りの機能を搭載したのですが、リリース直後には「もっと良くできるかもしれない」と、次の案を考え出していました。私たちにとってこの商品は、発売して終わりではなく、これからどう育てていくかが大事だと思ったんです。そうして始まったのが、新モデル「smoowa」の開発です。

酒井:リニューアルプロジェクトが立ち上がった際に、私が特にほしいと思っていた機能は、双方向の会話を途切れることなく補声する機能ですね。旧モデルは多くのお客様にご好評いただいた商品でしたが、会話する中で声が被ると、どうしても音切れしてしまっていたんです。双方向の自由な会話を途切れなく聴き取りやすくできれば、もっとスムーズなコミュニケーションを実現できると思っていました。

小野:私も旧モデルを使用している現場で、実際の使用感を伺ったのですが、周囲の騒音が大きい場所やパーティションまでの距離がある場所では、「効果を感じづらい」というお声もありました。そのため、もっと過酷な環境条件下でも聴き取りやすくて、かつ自然な補声ができる商品が必要だと感じていましたね。

藤田:旧モデルの発売後、さまざまな企業が“パーティション越しの会話の困りごと”解決のために商品を市場投入し始めました。こうした状況下で、レジやインフォメーションカウンターでの使用を想定した機能もアップデートの必要はあったのですが、私はそれ以上に、もっと多彩な場所や状況においても“クリアで聴き取りやすい音”が求められているのではないかと感じ始めていました。

小俣:その多彩な環境のひとつとして、私たちが見据えていたのは海外市場への展開です。海外ではコロナ禍以前より、受付などの窓口業務が行われる場所では、セキュリティの観点からガラス越しでの会話が当たり前でしたから、これはコロナ収束後も十分に需要があると考えられました。

また、聴覚にハンディキャップがある方のためのマイクなども導入されるケースも多いのですが、これも性能的に十分ではない。そこで、もっとクリアな音声で、使用する環境を選ばず、双方向の会話ができれば、世界中の方の「音の困りごと」を解決できるのではないかと考えたわけです。

譲れない想いと良い音へのこだわりが、新しい進化をもたらす

阿部:そもそも、マスクやパーティション越しの声が聴こえにくいのは、高音域・中音域・低音域とある声の帯域のうち、特に高音域が減衰しやすいからなんです。ザワザワとした周囲の騒音は主に低音域からなるため、相手や自分の声が周囲の騒音に紛れてしまいがちになるんです。
旧モデルでは減衰した高音域を補うことで、声を聴き取りやすくサポートしていましたが、「smoowa」では高音域に加えて、母音に多く含まれる中音域もしっかり出せるように変更したことで、よりはっきりと聴こえるようになりました。

藤田:smoowaの音づくりにおいて “自分自身も当事者であること”は特に大切にされた視点でした。新モデルにはノイズキャンセリング機能も搭載していますが、自分が混雑する病院や小売店で会話することを想定しながら、実際にスピーカーからザワザワという騒音を流し、その中で模擬会話試験と調整を何度も繰り返しました。恐らく1000回はゆうに超えているのではないでしょうか。

阿部:音づくりに加えて、特に私がこだわったのは、縦横6cmという旧モデルと同じサイズのまま、途切れのないスムーズな会話を実現する双方向同時通話機能を搭載した点です。一般的には、ハウリングやエコーの発生を抑えるためにスピーカーとマイクの物理的距離を取っておきたいところですが、それではサイズが大きくなってしまったり、筐体が分かれてしまったり、と…デザイン性を損なってしまいます。双方向同時通話の機能と商品のコンパクトさを両立することはかなりの難題でした。ただし、旧モデルはそのコンパクトさも魅力のひとつですからここはどうしても譲れなかったんです。『開発は、制約があるからこそ面白い』…私が尊敬する大先輩の受け売りですが、まさにこのマインドでした。試作を何度も繰り返し、音響・機構・電気・信号処理、あらゆる面からアプローチし続けました。


中野:旧モデルのコンセプトのひとつには、「コンパクトで自然な形状」があります。これは生活の中に溶け込み、使い手が身構えずに使えるようにとの配慮を形にしたものです。「smoowa」の試作段階では、現在のサイズの2倍ほどの大きさがありましたが、縦横のサイズは絶対にキープしたい、1mmも妥協したくない思いがありました。

非常に難航しましたが、その結果旧モデルと比べて、厚みを2mm増やすだけの変更に留めることに成功したんです。これによって既に獲得していたグッドデザイン賞を「smoowa」でも継承することができました。

小俣:また、ユニットのどの位置からどの向きにコードを出すかまで緻密に計算されているので、パーティション越しにシンメトリーな取り付けができるんです。特に海外では見た目の美しさも重視されることが多いので、自信をもってオススメできる商品となりました。

コロナ後の社会にも音で貢献し続けてゆくために

中野:プロジェクトが始まった当初は、コロナの影響が終わるまでの期間限定商品のつもりでした。しかし蓋を開けてみれば、コロナウィルスの蔓延によって今まで見えていなかった、“距離を隔てて会話する機会の多さ”も浮き彫りとなった気がします。

小野:中野さんのおっしゃる通り、アフターコロナの社会でも、距離を取った会話というライフスタイルはきっと継承されていくと思います。また、どんな場所でも、誰もが聴き取りやすい音づくりを追求したことで、例えば聴覚にハンディキャップをお持ちの方がおられる高齢者施設や養護施設などでも「smoowa」の音を活かせるのではないでしょうか。

藤田:さらに、ユニットを増設することで最大3対3の複数人の会話にも対応できるようになりました。店舗や病院の窓口以外にも、例えば企業の応接室や商談スペースといった場所でも活躍できるシーンは多いはずです。

阿部:「smoowa」は、お客さまの声を元に、営業・企画・開発・デザインが一体となって意見を交換しあって育ててきました。会話をスムーズにするための音づくりは、私たちチームメンバーの対話から生まれるものだと信じています。
今回の分野を跨いだチーム連携は、スムーズな製品リリースとブラッシュアップの成功という形で実を結びました。スピード感を持って、従業員が自由に意見を交換しあって進めるモノづくりのスタイルは、次の商品開発の中でもぜひ続けていきたいですね。


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